ローマ人の物語 34 (34) (新潮文庫 し 12-84)
ローマ人の物語 34 (34) (新潮文庫 し 12-84)の口コミ情報
おすすめ度:
キリスト教が広まった理由についての考察, 2008/10/01
今年に刊行された文庫版の「ローマ人の物語」はこれで最後です。
この巻では、3世紀の軍人皇帝が次々とたっては、身内や部下に殺されていく時代が描かれていました。共和制になって依頼ずっとローマをひっぱってくる人材を輩出し続けて来た元老院が実験を失い、軍人とくに騎兵の隊長が皇帝になるよようになってからは(というよりはそうするしかなくなるくらいパックス・ロマーナが崩れていって)、ローマ帝国内は常に不穏で落ち着きがなく人々の幸せも相対的に低くなっていきます。
この巻で興味深かったのは、そうしたローマ帝国内で数百年かけてキリスト教が勢力を拡大していった過程についての考察です。ユダヤ教から分派したキリスト教がどのようにして公認宗教として認められて行くのか、その背後にあったものはなんだったのか。これが面白かったです。塩野さんは、キリスト教が特にすぐれていたわけではなく、ローマの没落がキリスト教に人を傾かせていったのだという主張は頷ける部分が多くありました。
曰く、ローマ市民というものに誰でもなれるようなったことで帰属感をもてるコミュニティに人々が流れた。昔は行き届いていた福祉が滞りがちになり、病人や子供でも寡婦でも助け合いで暮らして行けるキリスト教コミュニティに流れた。世相が厳しくなってきて、確かなもの、あいまいな多神教ではなく絶対の力を説くキリスト教に人が流れた。同様に、現世主義だったローマなのに現世が幸せでない人が多くなり、死後の幸福を説くキリスト教に人が流れた。などなど。
またキリスト教のほうでも、ユダヤ教の偶像崇拝禁止から舵をとり、キリストの画像などを認めるようになった事、ユダヤ教と違って軍人や高官になることを認めるなどで、ユダヤ教と違ってローマ人がじわじわと入り込みやい状況にしていたことなどが挙げられていましたが、おおもとのところでは国がゆるやかに崩れていって、国土の防衛もインフラの整備も手に余るようになり、為政者が数年ごとにいれかわり、食料の配給にも問題があるようになり、人々が力強い言葉を発し他と一線を画する強い主張をする一方で互助会的なコミュニティで共同体としてうまくやっていたキリスト教に流れて行ったという事で、そのあたりで積年の疑問が氷解しました。
「ローマ人の物語」
かつてのような英雄や優れた指導者(まれに暗君・暴君もいましたが)の時代は終わりを告げ、部下や軍人同士のいざこざで首がすげかえられる時代になってきて、国家としての魅力はなくなってきましたが、人間の物語として読むとまだまだ面白いし、知的好奇心が満たされる本です。
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